カウンセリングのエッセンスを利用して、親子関係をまるく円滑にする、新しいコミュニケーション法です。
EQWELチャイルドアカデミー5教室を運営するユニバーサルアカデミーの社長であり、ひげ先生と親しみを込めて呼ばれている田口圭二先生が編み出したものです。
(前回の◯づけ子育てはこちら)
「◯づけ」のやり方はとてもカンタンです。
基本的には、
「へぇ」
「なるほど」
「うんうん」
「そうなんだ」
といった相づちを上手く使って、まずは子どもの話を受け止めます。
次に、話の中で子どもが使ったコトバを親が繰り返して言います。
どこの家庭でも交わされていそうな、よくある会話を使って「◯づけ」の具体例を見てみましょう。
親「ダメよ、こないだ買ったばかりでしょ」
子「もうずいぶん前じゃん。ボロボロなんだよ」
親「手入れしてないんでしょ?モノを大切にしないんだから」
子「えー。みんな新しいの買ってもらってるのに・・・」
この会話を「◯づけ」で再現すると、こうなります。
親「そっかぁ、グローブが欲しいんだね。おととし買ったのは、もう使えないの?」
子「2年練習しまくったから、ボロボロになっちゃったんだよ」
親「へぇ!ボロボロになるほど練習したんだね。手入れはしていたの?」
子「うん、毎日磨いてるもん。大切にしてるよ」
親「そう!そんなに大切にしてもらえたなら、グローブもきっと喜んでるね。じゃあ新しいのを買おっか。また大切にしてね」
子「やったー。お母さんありがとう。大切にする!」
同じようにグローブをおねだりするところから始まりますが、後者は前者に比べて会話が丁寧なので、子どもからいろいろな情報を聞き出せています。
その結果、お母さんが納得してグローブを買ってあげるという結論に達しているように感じると思います。
「◯づけ」は3ステップ
このように、会話の質や流れを変える「◯づけ」ですが、この例をよく見てみると3ステップで成立しているのが分かると思います。
はじめに、相づちを打って子どもの話を受け止めたら、次に子どもが話の中で使ったコトバを繰り返し、最後に優しく質問をしてさらに子どもの話を聞き出していくという流れ。
基本的には、この3ステップを繰り返すだけです。
ただし、注意点があります。
会話の中で、子どもの意見がどんなに間違っていると思っても、否定したり、親の意見を言ったりしてはいけません。
親はひたすら聞くことに徹するのです。
この3ステップを取り入れると、子どもは親が何も言わずに自分を受け入れてくれた、認めてくれたと感じます。
そのため、ゆったりとした落ち着いた気持ちで会話が出来るようになります。
親の側からしても、子どもが落ち着いてきちんと説明してくれれば、余計な心配をする必要はなくなります。
疑ったり、怒ったりすることなく、子どもたちを全力で応援出来ます。
つまり、「◯づけ」を使うと、お互いにココロに余裕が出来るため、会話がスムーズに進むようになるのです。
改めて前者の会話を見てみると、「肝心なことを聞いてないな」とか「乱暴な言い方だな」など、省略されたり誇張されたりしている部分があるのを感じるのではないでしょうか?
私たちは意外と、正確な情報をやりとりしていないものなのです。
コミュニケーションは相互作用
「◯づけ」が有効な理由がもう一つあります。
それは、無意識にやってしまうネガティブな反応を防ぐこと。
例えば、前述の例文でグローブをおねだりした子に対して、
「ダメよ、こないだ買ったばかりでしょ」
と親がすぐに言っていますが、これは上手なコミュニケーションとは言えません。
もちろんグローブを購入するのは親ですから、買うか買わないか、最終的な判断は親がします。
ただし、このように子どものを意見を頭ごなしに否定することはやめましょう。
頭ごなしに否定し続けていると、
「どうせ言ってもわかってくれないし」
と、何もは話さなくなってしまいます。
しかも、このときの「ダメよ」は、子どもにおねだりされたときに感じる「また?」という気持ちとともに、つい出てしまう反応に近いものではないでしょうか。
実はそこまで反対したいわけじゃないのに、つい否定のコトバである「ダメよ」から始めてしまうことはありませんか?
必要なら新しいグローブを買ってあげたいと思っているかもしれないのに・・・。
この無意識に出てしまう反応も、コミュニケーションを難しくしている要因なのです。
コミュニケーションは、相互に作用を及ぼしながら進んでいきます。
親がネガティブな反応をすると子どもに伝わり、子どももネガティブな反応を返してきます。
それにまた親が反応して・・・と連鎖するのです。
逆にいえば、親がポジティブな反応をすれば、子どもからもポジティブな反応が返ってくるもの。
この違いが、最初の二つの例文に現れていますね。
つまり、親が変われば、子どもが変わるのです。
コミュニケーションはいい影響も悪い影響も、相互作用を与えながら進んでいくものと理解しましょう。
- 「◯づけ」は3ステップ
- 相づちを打って子どもの話を受け止める
- 子どもが話の中で使ったコトバを繰り返す
- 優しく質問をしてさらに子どもの話を聞き出す
- 子どもの意見がどんなに間違っていると思っても、否定したり、親の意見を言ったりしない
- 親が聞くことに徹すると、子どもは親が何も言わずに自分を受け入れてくれた、認めてくれたと感じる
- コミュニケーションは相互作用。親が変われば、子どもも変わる
次回は、「◯づけ子育て」において大切なことをお話します。