「うちの子は、すぐにもじもじして人前で意見が言えません」
「言葉のかわりにすぐに手が出てしまうので、お友だちとのトラブルが絶えません」
ひかえめ過ぎるのか、恥ずかしがり屋でシャイ過ぎるのか、
なかなか自分の意見が言えないことに困っているとご相談を受けます。
協調性を大切にする日本人は、自分の意見をはっきりと言うのが苦手な国民性なのかもしれません。
とは言え、これからグローバル社会を生きていくであろう子どもたちには、相手を尊重しつつ自分の意見を伝えていくスキルが必要です。
頭の中で情報を整理できない
自分の意見を言うことは、子どもにとって簡単なことではありません。
気持ちを言葉にするには、頭の中で情報を整理する必要があります。
子どもは、この情報整理がうまくできないのです。
例えば、目の前に美味しそうなフルーツがある場面。
子どもの頭の中は「おいしそう。食べたい!」ということでいっぱいになります。
そこにお兄ちゃんが登場し、フルーツを食べ始めます。
子どもは食べたかったフルーツを奪われそうになって大混乱!
「わたしの〜!」と言って手が出て、大ゲンカに発展・・・
このような場面では、子どもを落ち着かせてから、気持ちと状況を言葉で整理して、解決方法を提案します。
「◯◯ちゃんもフルーツが食べたかったんだよね?
でも、お兄ちゃんが食べちゃったからびっくりしたんだよね?
2人ではんぶんこして食べられるかな?」
このように言い聞かせることで、子どもは自分の気持ちを整理し、納得します。
こんな場面を何度も経験するうちに、自分で情報を整理できるようになるのです。
どんなときにうまく言えて、どんなときにうまく言えない?
状況によっては、子どもが自分の意見をうまく言えることもあると思います。
成功したシーンでは「なぜうまく言えたか」を、
失敗したシーンでは「なぜうまく言えなかったか」を分析してみましょう。
うまく言えた時:家の中で家族と過ごしていた
うまく言えなかった時:公園で知らない子がいた
このような分析を続けていると、その子の特性が見えてきます。
この子の場合は、リラックスしている時は成功していて、緊張する場面では失敗するようです。
緊張していてうまく自分の意見が言えないようだと感じたら、親が適切な言葉を使って見本を見せます。
ブランコに乗りたいけれど、知らない子が乗って遊んでいる時は、
「◯◯ちゃんもブランコに乗りたいの。次に貸してね」
他の子が遊んでいるおもちゃで遊びたい時は、
「◯◯ちゃんも一緒に遊んでいい?」
もじもじしていても、子どもは親の様子をしっかり見ています。
子どもの意見を否定しない
日ごろの会話を振り返って、子どもの意見を否定していなか見直しましょう。
子どもがうまく意見を言えないときや好ましくないことを言ったとき、頭ごなしに否定していませんか?
会話の中で否定的な言葉が多いと、子どもの自己肯定感は高くなりません。
まずは「そうなんだね、◯◯って思うんだね」などと子どもの主張を受け止め、その後に正しい言い方や考え方を伝えましょう。
そうすることで、子どもは意見を言うことを恐れることなく自己肯定感を高めることができます。
さらに、他人の意見にも素直に耳を傾ける姿勢が育ちます。
また、語彙を増やすことが自分の気持ちを言葉にするうえで必要です。
そのために、親が豊かな言葉がけを意識しましょう。
例えば、「大きな声であいさつしなさい」という注意は、「相手に伝わる気持ちがいいあいさつをしようね」と言い換えることができます。
あいさつは「大きな声」よりも、「相手が気持ちいいと思えること」が大切だと気づくことができます。
子どもの意見に耳を傾け、その度に真剣に向き合ってください。
親がたくさんの言葉と愛情をかけることで、子どもは主体性を持ちつつ協調力もある柔軟な心に育ちます。
そして、どんな場面でも堂々と主張できる頼もしい人材になっていくのです。